向こうの世界は冬だった話

奥さんのひとりごと


友達と二人で川に来た。
この川は、とても大きい。
向こうのほうには海が見えている。
海は何回も散歩したことがある。
真っ白の砂浜に、エメラルドグリーンの海。
海には、左右に白くて高い壁がある。
そういえば理由は知らない。

川沿いには一階建ての長い建物がある。
トイレや休憩室のような部屋がいくつもある。
川で遊ぶ人の為の施設といったところか。
それのお陰か、夏は海よりもむしろ川の方が賑わっている。
わたしは、幼いころから水がこわいのと、泳ぎが下手なので、
入ったことはない。

今回、その川の水深がとても深いということを知った。
どういう訳か干上がってしまっていて、川底が見えていた。
下におりて観察したり、釣り糸を垂らしている人が小人のよう。
深いとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
わたしも下りてみることにした。

そういえば上では、ベビーフードを中心に、
お菓子や飲み物、はちみつなどをワゴンいっぱいに並べて、
ご自由にどうぞ~っと配っている男性がいた。
余裕のある方が善意でやっているようだった。

ワクワクしながら下りてみたものの、別になんてことはなかった。
また上がるのに苦労しただけだった。
なるべく最短で上がろうとしている人の真似をして、
斜面を真っすぐ這い上がっていたため、目に砂が入ってくる。
その感じや、土、木の根っこを掴む感覚など、
現実と同じように感じる。不思議だ。
映像は、写真で撮ったものを見ている感じに近い。

なんとか上に辿り着き立ち尽くしていると、
やけに冷たい風が吹いてきた。
あっという間に空は暗くなり、雨粒が落ちてきた。
何か寒い…
その辺の人達も一斉に施設に入った。
外を眺めていると、雨が雪に変わっていった。
向こう岸にクリスマスの様なイルミネーションが見える。
反対側を見ると、サンタクロースのような置物がライトアップされている。
そっか、今は冬だったかぁとか思いながら、多少違和感を感じていた。

目が覚めて、あの違和感は何だったのか考えた。

もちろん、現実の世界と季節が違うからということもあると思う。

あの時の服装は、確かに長袖だったがコートを羽織っている人は見ていない。
そこに、急な寒さと雪。
うーん…
異常気象で季節がおかしいのか。
だいたい雨が多すぎるのもおかしい。
なのに川が干上がっている。
ますますおかしい。