水害に遭った話(向こうの世界)

奥さんのひとりごと

その日は商店街に来ていた。
何回か行ったことのある和菓子屋さんに寄ったが、
ふたつ前のお客さんで売り切れてしまったため、
仕方なく店を出た。
そこですぐに異変に気が付いた。
長く続くアーケードの向こうのほうを指差しながら、
人々がざわざわとしている。
地響きもしている。
嫌な予感…

反対方向に一目散に走った。
わたしにつられ、皆一斉に走り出した。

次第に水があがってきた。
間に合わないと判断して、アーケードをよじ登ることにした。

あっという間に、水が溢れ店を飲み込んだ。
所々にしがみついた人達を見ながら、ここからどうすべきかと考えていた。
意外と冷静なのは、初めてではないからである。
そして、助かることが漠然と分かっている。


続きは次に…