魔法が使えた頃の話

奥さんのひとりごと

小学三年生の一時期だけ、

面白い魔法が使えた。

夜中目が覚めた時にだけ使えた。

静かじゃないと、使えないようだった。

当時、光GENJIが爆発的に流行っていた。

うちはそういった物は買ってくれないので、

同じビルの友達のところで、カセットテープや

ラジオなんかを聴かせてもらっていた。

大人になって飛鳥が作ったと知り、

衝撃的だったのを思い出した。

これは、ユーミンだったのか~とか、

あれも小室ファミリーだったのか~とか、

けっこうあるあるな気がする。

話を戻すと、

夜中にふと目が覚め、

なんだか眠れなくなった日があった。

薄明るくなった天井を見ながら、

早く朝が来ないかなと思っていた。

なんとなく、最近聴いていた『パラダイス銀河』

が頭に流れ出した。

ちょっと上機嫌になったわたしは、

ローラースケートを滑るようにリズムをとってみた。

右に~

左に~

と、途中で気付いた!

音が天井から聴こえている。

スピーカーから流れているように。

しかも、友達の家で聴いた音源そのものなのだ。

右と思えば、右側から、

はたまた、左と思えば左側のスピーカーから、

のりのりの音量で流せるのだ。

なのに、誰一人起きたことがない。

それから、魔法が使いたくてたまらないからか、

夜中に起きることが増えていた。

選曲もできるようになったり、

音量もコントロールできた。

ただ、光GENJIしかまともに聴いたことがなかったので、

それ以外は再生できなかった。

これもいつの間にか出来なくなって、

がっかりしたのを覚えている。

友達に話した時にみんなは出来ないということを知って、

やっぱり”魔法”だったんだ、とか思っていた。

一体何だったのか…?

本当に楽しかったなぁ。